スラリーってなに?

汚泥処理

 スラリーとは、粘土や鉱物などの固体粒子が液体中に懸濁した流動体のことです。スラリーは、建設業界や工業分野で様々な用途に利用されていますが、そのままでは廃棄や再利用が困難です。そのため、スラリーを処理することで、固体粒子と液体を分離したり、固体粒子の量や質を調整したりする必要があります。

この記事では、スラリーの種類と特徴、用途や処理方法について詳しく解説します。スラリーに関する基礎知識を身につけて、応用力を高めましょう。

 

スラリーの種類と特徴

 スラリーは、液体の種類や固体粒子の大きさや量によって様々な種類に分類されます。ここでは、代表的なスラリーの種類を紹介します。

  • メントスラリー:セメントと水を混合して作った混合液のことです。セメントスラリーは、井戸掘りや地盤改良などで使用されます。セメントスラリーを井戸の中に圧送して固めることで、ケーシングを支持したり、地下水の流れを防止したりする効果があります。セメントスラリーは、水和反応で硬化するため、施工後は速やかに処理する必要があります。また、セメントスラリーの流動性や硬化時間は温度や水分量などに影響されるため、適切な調整が必要です。

 

  • セメントモルタル:セメントと砂と水を混ぜて作ったもので、一般的にモルタルと呼ばれているものです。セメントモルタルは、レンガや石などの接着剤として使用されるほか、コンクリートの表面仕上げや補修などにも使用されます。セメントモルタルは、水分量によって堅練りモルタルと柔練モルタルに分けられます。堅練りモルタルは、水分が少なくて固い状態のもので、コテで塗り付けるように使用します。柔練モルタルは、水分が多くて柔らかい状態のもので、スプレーやポンプで吹き付けるように使用します。

 

  • ポリマーセメントモルタル:セメントと砂と水にポリマーを添加して作ったものです。ポリマーセメントモルタルは、耐震補強や防水、防錆、防食などの機能を持ちます。また、水和反応で硬化するため、湿った状態でも施工が可能です。ポリマーセメントモルタルは、添加するポリマーの種類や量によって性能が異なります。例えば、アクリル系ポリマーを添加すると粘着性や伸び性が高まります。エポキシ系ポリマーを添加すると強度や耐久性が高まります。

 

  • 鉱物スラリー:鉱物を粉末状にして水と混ぜたもので、鉱物の輸送や精製に使用されます。鉱物スラリーは、鉱物の種類や濃度によって性質が異なります。鉱物スラリーの処理には、濾過や遠心分離などの方法が用いられます。

 

  • 汚泥スラリー:下水処理や工業廃棄物などで発生する汚泥を水と混ぜたもので、汚泥の処理や再利用に使用されます。汚泥スラリーは、汚泥の種類や水分量によって性質が異なります。汚泥スラリーの処理には、濾過や沈降などの方法が用いられます。

 

  • 液肥スラリー:家畜のふん尿を水と混ぜたもので、農地に還元することで肥料として使用されます。液肥スラリーは、ふん尿の種類や水分量によって性質が異なります。液肥スラリーの処理には、沈降や濾過などの方法が用いられます。

スラリーの処理方法

 スラリーは、液体中に固体粒子が懸濁しているため、そのままでは廃棄や再利用が困難です。そのため、スラリーを処理することで、固体粒子と液体を分離したり、固体粒子の量や質を調整したりする必要があります。ここでは、代表的なスラリーの処理方法を紹介します。

  • 濾過:スラリーを濾過布や濾過器などの装置を通して、固体粒子と液体を分離する方法です。濾過によって得られる固体粒子を濾渣、液体を濾液と呼びます。濾過は、固体粒子と液体の分離が容易で、処理速度が速いというメリットがありますが、濾過装置のコストが高く、濾過布や濾過器のメンテナンスが必要というデメリットがあります。濾過は、鉱物スラリーや汚泥スラリーなどの処理によく使われます。

 

  • 沈降:スラリーを静置して重力によって固体粒子と液体を分離する方法です。沈降によって得られる固体粒子を沈殿物、液体を上清液と呼びます。沈降は、濾過装置などのコストが不要で、操作が簡単というメリットがありますが、固体粒子と液体の分離が不完全で、処理時間が長いというデメリットがあります。沈降は、セメントスラリーや液肥スラリーなどの処理によく使われます。

 

  • 遠心分離:スラリーを高速で回転させて遠心力によって固体粒子と液体を分離する方法です。遠心分離によって得られる固体粒子を遠心ケーキ、液体を遠心液と呼びます。遠心分離は、固体粒子と液体の分離が高速で高効率で、固体粒子の含水率も低くなるというメリットがありますが、遠心分離機のコストや消費電力が高く、騒音や振動が発生するというデメリットがあります。遠心分離は、鉱物スラリーや汚泥スラリーなどの処理によく使われます。

 

  • 蒸発乾燥:スラリーを加熱して液体を蒸発させて固体粒子だけにする方法です。蒸発乾燥によって得られる固体粒子を乾燥物と呼びます。蒸発乾燥は、固体粒子の回収率が高く、液体の再利用が可能というメリットがありますが、加熱装置のコストや消費エネルギーが高く、固体粒子の品質が低下する可能性があるというデメリットがあります。蒸発乾燥は、鉱物スラリーや液肥スラリーなどの処理によく使われます。

 

  • 凝集凝固:スラリーに凝集剤や凝固剤を添加して固体粒子を大きくして分離しやすくする方法です。凝集凝固によって得られる固体粒子をフロックと呼びます。凝集凝固は、固体粒子の分離が容易で、液体の透明度が高くなるというメリットがありますが、添加剤のコストや環境負荷が高く、添加剤の選定や調整が難しいというデメリットがあります。凝集凝固は、汚泥スラリーや液肥スラリーなどの処理によく使われます。

まとめ

 スラリーとは、粘土や鉱物などの固体粒子が液体中に懸濁した流動体のことです。スラリーは、流動性が高く、自己充填性やセルフレベリング性に優れるという特徴があります。これらの特徴を持つスラリーは、建設業界や工業分野で様々な用途に利用されています。スラリーは、液体の種類や固体粒子の大きさや量によって様々な種類に分類されます。スラリーを処理することで、固体粒子と液体を分離したり、固体粒子の量や質を調整したりする必要があります。スラリーの処理方法には、濾過や沈降などがあります。

この記事では、スラリーの種類と特徴、用途や処理方法について解説しました。スラリーに関する基礎知識を身につけて、応用力を高めましょう。

参考文献

  1. 日本土木学会編『土木用語辞典』、鹿島出版会、2005年。
  2. 日本工業規格 JIS A 5001:2012 『セメントスラリー』、日本規格協会、2012年。
  3. 日本工業規格 JIS A 6204:2012 『セメントモルタル』、日本規格協会、2012年。
  4. 日本工業規格 JIS A 6205:2012 『ポリマーセメントモルタル』、日本規格協会、2012年。
  5. 日本工業規格 JIS K 0102:2012 『水質及び廃水の試験方法』、日本規格協会、2012年。