キャビテーションとは?

 キャビテーションとは、液体の流れの中で圧力差によって泡が発生し消滅する物理現象です。この現象は、ポンプやプロペラなどの流体機械に影響を与える重要な問題です。この記事では、キャビテーションの原理、影響、対策について解説します。

 

 

キャビテーションの原理

キャビテーションの原理は以下のように説明できます1

  • ポンプ内部で水の流速が早くなり、圧力が低下する。
  • その圧力が水の飽和蒸気圧力を下回ると、水が蒸気化する。
  • 圧力が高い場所で気体が液体に戻るとき、体積が急激に変化してポンプに衝撃を与える。

ここで、飽和蒸気圧力とは、液体と気体が平衡状態にあるときの圧力のことです。温度が高いほど、飽和蒸気圧力は高くなります。つまり、水の沸点は、圧力によって変わります。例えば、1気圧での水の沸点は100℃ですが、0.1気圧での水の沸点は約45℃です。逆に言えば、圧力が低いと、水は低い温度でも沸騰します。

キャビテーションの発生しやすさを示す指数として、キャビテーション数というものがあります。キャビテーション数は、以下の式で定義されます。

\sigma = \frac{p_\infty - p_v}{\frac{1}{2}\rho U_\infty^2}

 

ここで、p_\inftyは液体の一般流の静圧、p_vは液体の蒸気圧、\rhoは液体の密度、U_\inftyは液体の一般流の流速です。キャビテーション数が小さいほど、キャビテーションは発生しやすいと言えます。

キャビテーションの影響

キャビテーションが発生すると、ポンプに以下のような影響があります2

  • 異音・振動:キャビテーションにより発生した衝撃波により、ポンプの音や振動が発生します。この音は、ヤカンのお湯が沸騰したときのコトコトという音をもっと激しくしたような音です。また、衝撃波がランダムに発生しますので、振動には周期性がなく、ランダムになります。
  • エロージョン:衝撃波がポンプの表面に長時間にわたり当たると、表面が損傷していきます。キャビテーションを受けた表面はザラザラになり、さらに進行すると穴が開くこともあります。これは、機器の寿命を短くするだけでなく、流体の漏れや汚染の原因にもなります。
  • ポンプの性能低下:キャビテーションが進行すると、ポンプの内部が蒸気で満たされることにより、ポンプの揚程の低下や流量の低下などの性能低下がみられるようになります。さらに進行すると、もはや水を汲み上げるという機能を果たさなくなり、最後には運転不可能となります。

キャビテーションの対策

キャビテーションの対策としては、以下のような方法があります2

  • ポンプ入口圧力を上げる:ポンプ内部で圧力が低下しても、飽和蒸気圧力まで低下しないように、あらかじめポンプに吸い込む水の圧力を上げておく方法です。具体的な方法は、ポンプの吸込み水を貯めるタンクの位置を高く設置すること、吸込み水の水位を高く保つこと、ポンプの設置位置を低くすること、吸込みタンクに窒素などのガスで加圧することなどが考えられます。
  • 圧力低下を抑える:ポンプの吸込み圧力を変えられない場合は、圧力降下を抑える必要があります。これは、使用するポンプを変更する必要があるかもしれません。圧力降下を抑えるために、揚程や流量の少し小さいタイプのポンプを選定する、揚程の小さいポンプを2つ直列に設置し、ポンプ一つの圧力降下は低くする、あるいは、単段ポンプから多段ポンプに変更する、などの方法が考えられます。

まとめ

 キャビテーションとは、液体の流れの中で圧力差によって泡が発生し消滅する物理現象です。この現象は、ポンプやプロペラなどの流体機械に影響を与える重要な問題です。キャビテーションの原理は、ポンプ内部で圧力が低下し、飽和蒸気圧力を下回ることによって水が蒸気化し、その後に圧力が高くなって水に戻るときに衝撃波が発生するというものです。キャビテーションの影響は、異音・振動、エロージョン、ポンプの性能低下などがあります。キャビテーションの対策としては、ポンプ入口圧力を上げる、圧力低下を抑えるなどの方法があります。

 キャビテーションは、流体機械の運転において注意すべき現象です。キャビテーションの発生を防ぐためには、ポンプの適切な選定や設置、運転条件の管理などが重要です。キャビテーションの原理や影響、対策について理解して、ポンプの安全で効率的な運転を目指しましょう。

参考文献

  1. キャビテーション - Wikipedia
  2. キャビテーションの原理と対策について
  3. キャビテーションの発生原因と対策方法
  4. キャビテーションの発生と影響