クランプメーターの基礎知識と使い方 電流測定のコツと注意点

クランプメーターの使用例を示す図。画像 3/4

 電気工事や設備管理に欠かせない計測器の一つがクランプメーターです。クランプメーターは、電線に流れる電流を測定することができる便利な機器ですが、その原理や使い方、種類や選び方などを知っておくと、より効果的に活用できます。この記事では、クランプメーターの基礎知識と使い方をわかりやすく解説します。

クランプメーターとは

 クランプメーターとは、電線に流れる電流を測定する計測器のことです。クランプメーターの最大の特徴は、電線を切断することなく、クランプと呼ばれる洗濯ばさみのような部分で電線を挟むだけで測定できるという点です。これは、電線に流れる電流によって発生する磁界を検出することで、電流値を割り出すという原理に基づいています。クランプメーターは、回路に直接接続する必要がないので、回路への影響も少なく、安全に大きな電流も測定できます。測定値は、アナログ(メーター)で表示するタイプとデジタルで表示するタイプがあります。デジタルで表示するタイプの製品例を写真1に示します。 

 

DCM-400AD に対する画像結果

DCM-400AD (三和電気計器株式会社参考)

クランプメーターの使い方

クランプメーターの使い方はとても簡単です。基本的な手順は以下の通りです。

  1. 電源ボタンを押してクランプメーターを起動します。
  2. 測定したい電流の種類(直流か交流か)とレンジ(測定範囲)を設定します。レンジはオートレンジ式の場合は自動で切り替わりますが、マニュアルレンジ式の場合はダイヤルやボタンで選択します。レンジは測定値よりも大きく、かつ最も近いものを選びます。
  3. クランプを開けて測定したい電線を通しはさみます。電線はなるべくクランプの中央に来るようにします。線をクランプの中央にすると測定誤差が小さくなります。ただし、それほど神経質になる必要はありません。また、交流の場合、はさむ方向の極性はありません。ただし、複数の線(または平行コード)をはさむと測定できません。
  4. 測定値をディスプレイで確認します。測定値は電流の単位であるアンペア(A)で表示されます。測定値がレンジを超えるとオーバーレンジとなり、ディスプレイに「OL」などの表示が出ます。その場合はレンジを大きくして再測定します。
  5. 測定が終わったら、クランプを外して電線を取り出します。電源ボタンを押してクランプメーターをオフにします。

クランプメーターの種類

  クランプメーターにはいくつかの種類があります。測定する電流の種類や用途によって適したものを選ぶ必要があります。ここでは、主なクランプメーターの種類と特徴を紹介します。

負荷電流と漏れ電流

  クランプメーターは、測定できる電流の大きさによって「負荷電流測定タイプ」と「漏れ電流測定タイプ」に分けられます。 負荷電流測定タイプは、一般的に数アンペア以上の電流を測定できるタイプです。通常の電気設備や機器の電流を測定する場合に使用します。負荷電流測定タイプは、微細な電流漏れなどは測定できません。 漏れ電流測定タイプは、数アンペア以下の微細な電流も測定できるタイプです。電線の劣化や絶縁不良によって発生する電流漏れを測定する場合に使用します。電流漏れは、火災や感電の原因になる危険な現象ですので、定期的にチェックすることが重要です。 最近は、負荷電流と漏れ電流の両方を測定できるタイプもあります。その場合は、自動で切り替えるタイプや手動で切り替えるタイプがあります。測定の際には、測定モードを確認しておきましょう。

直流と交流

  クランプメーターは、測定できる電流の種類によって「直流測定タイプ」と「交流測定タイプ」に分けられます。 直流測定タイプは、電流の向きが一定の直流を測定できるタイプです。乾電池や太陽光発電などの直流電源の電流を測定する場合に使用します。直流測定タイプは、クランプに「+」と「-」の表示があり、電流の向きによってプラスかマイナスかを識別できます。 交流測定タイプは、電流の向きが絶えず変化する交流を測定できるタイプです。コンセントや電力会社から供給される電流を測定する場合に使用します。交流測定タイプは、はさむ方向の極性は関係ありません。 最近は、直流と交流の両方を測定できるタイプもあります。その場合は、自動で切り替えるタイプや手動で切り測り替えるタイプがあります。測定の際には、測定モードを確認しておきましょう。

平均値と実効値

 クランプメーターは、測定できる電流の波形によって「平均値方式タイプ」と「実効値方式タイプ」に分けられます。 平均値方式タイプは、正弦波の電流を測定できるタイプです。正弦波は、一般的な交流電源の波形です。平均値方式タイプは、電流の平均値を測定して、実効値に換算して表示します。実効値とは、交流電流の有効な大きさを表す値で、正弦波の場合は平均値の1.11倍になります。平均値方式タイプは、正弦波以外の波形の場合は測定誤差が発生する可能性があります。 実効値方式タイプは、正弦波や歪んだ波形の電流を測定できるタイプです。歪んだ波形とは、電子機器やインバータなどによって変形された波形です。実効値方式タイプは、電流の実効値を直接測定して表示します。実効値方式タイプは、電力や電力量の評価に適しています。

クランプメーターの選び方

 クランプメーターを選ぶ際には、以下のようなポイントに注意しましょう。 測定する電流の種類や大きさに合わせて、負荷電流測定タイプか漏れ電流測定タイプか、直流測定タイプか交流測定タイプか、平均値方式タイプか実効値方式タイプかを選びます。 測定する電線の太さや形状に合わせて、クランプの大きさや形状を選びます。クランプが電線にフィットしないと測定誤差が発生する可能性があります。 測定する環境や用途に合わせて、防水や防塵などの機能や、データ保存や通信などの機能を選びます。測定条件や目的に応じて、必要な機能を備えたクランプメーターを選びます。 測定する精度や安全性に合わせて、測定誤差や定格電圧などの性能を選びます。測定値の信頼性や安全性を確保するために、性能の高いクランプメーターを選びます。

まとめ

 クランプメーターは、電線に流れる電流を測定することができる便利な計測器です。クランプメーターには、測定する電流の種類や大きさや波形によって、様々な種類があります。クランプメーターの使い方は、電線を挟むだけですが、注意点もあります。クランプメーターを使って、電気工事や設備管理に役立てましょう。

参考文献