マニホールド電磁弁の基礎知識と使い方

SMC: VV3Q12-03-Q

 マニホールド電磁弁とは、複数の電磁弁を一つのブロックにまとめた装置で、空気や水などの流体の方向や流量を制御するために使われます。マニホールド電磁弁は、省スペースや省エネ、高性能や高信頼性などのメリットがありますが、同時に選び方や使い方に注意が必要です。この記事では、マニホールド電磁弁の基本的な構造と種類、選び方と使い方のポイントについて解説します。

マニホールド電磁弁の構造と種類

マニホールド電磁弁は、以下のような構造で構成されています。

  • 電磁弁:流体の開閉を行う部品で、ソレノイドとバルブからなります。ソレノイドは電流を流すと磁力を発生し、バルブを動かします。バルブは流体の流路を切り替えます。
  • マニホールドブロック:電磁弁を取り付ける部品で、流体の供給や排気を行います。マニホールドブロックには、Pポート(元圧エアーの入口)、A/Bポート(アクチュエーターの出口)、EA/EBポート(排気の出口)があります。
  • コネクタ:電磁弁と電源を接続する部品で、配線の簡略化や信号の伝送を行います。コネクタには、DINタイプやフラットタイプなどの種類があります。

マニホールド電磁弁には、以下のような種類があります。

  • ポート数:電磁弁に入出する流体の経路数で、2ポート(ON/OFF)、3ポート(1方向制御)、4ポート(2方向制御)、5ポート(2方向制御+中立)などがあります。
  • ポジション数:電磁弁の切り替え位置数で、2ポジション(ON/OFF)、3ポジション(ON/中立/OFF)などがあります。
  • 動作方式:電磁弁内部で流体を開閉する仕組みで、直動式(ソレノイドバルブ)とパイロット式(流体圧差を利用する)があります。
  • ソレノイド数:電磁弁を駆動する電磁石の数で、シングルソレノイド(片方のポジションに電流を流す)とダブルソレノイド(両方のポジションに電流を流す)があります。
  • 中立位置:3ポジションの電磁弁の非通電時の位置で、オールポートブロック(全てのポートが閉鎖)、プレッシャーセンタ(PポートからA/Bポートに供給)、エキゾーストセンタ(A/BポートからEA/EBポートに排気)などがあります。
  • 配管方式:電磁弁に配管する方法で、直接配管(電磁弁本体にポートがある)とベース配管(マニホールドやサブプレートにポートがある)があります。

 

マニホールド電磁弁の選び方

マニホールド電磁弁を選ぶ際には、以下のようなポイントに注意してください。

  • 必要流量:駆動するアクチュエーター(シリンダーなど)の容積や動作速度から必要な流量を計算し、それに対応する電磁弁の口径やCv値(流量係数)を選びます。必要流量が大きい場合は、大口径や大流量タイプの電磁弁を選ぶ必要があります。
  • 用途に合わせたポート数とポジション数:駆動するアクチュエーターの種類や動作条件からポート数とポジション数を決めます。例えば、シリンダーの伸縮を制御する場合は、4ポート2ポジションの電磁弁を選びます。また、非通電時にアクチュエーターをどのような状態にしたいかで中立位置の種類を決めます。
  • 動作方式とソレノイド数のバランス:駆動するアクチュエーターの応答性や安全性から動作方式とソレノイド数のバランスを決めます。直動式は応答性が高く、小型で低圧にも対応できますが、消費電力が大きく、大口径や高圧には向きません。パイロット式は大流量や高圧に対応できますが、応答性が低く、一次側と二次側の差圧が必要です。シングルソレノイドは電流を遮断すると元の位置に戻りますが、ダブルソレノイドはその位置に保持されます。
  • 配管方式と設置場所:設置場所や配管方法から配管方式を決めます。直接配管は自由度が高く、単体で使用できますが、配管や配線が多くなります。ベース配管は省スペースで、複数の電磁弁を一括で管理できますが、専用のベースやアダプターが必要です。

マニホールド電磁弁の使い方

マニホールド電磁弁を使用する際には、以下のような注意点やトラブルに気を付けてください。

  • 元圧エアーの供給不足:マニホールド電磁弁の数が多いと、元圧エアーの供給量が不足することがあります。これは、元圧から電磁弁までの配管の口径や長さ、曲げ角度などによって流量や圧力損失が発生するためです。元圧エアーの供給不足を防ぐためには、元圧から電磁弁までの配管の口径を大きくし、配管方法を効率的にすることが必要です。
  • 排気ポートの共通化:マニホールド電磁弁では各電磁弁の排気ポート(EA/EBポート)がマニホールドブロック内で連結されています。これは省スペースや省エネに有利ですが、同時に背圧により、排気ポートから逆流することがあります。これは、アクチュエーターの動作に影響を与えることがあります。排気ポートの共通化を防ぐためには、各電磁弁にシルエンサーを取り付けるか、排気ポートを個別に配管することが必要です。
  • 電磁弁の故障:マニホールド電磁弁では各電磁弁が密接に接続されています。これは高信頼性に有利ですが、同時に一つの電磁弁が故障すると他の電磁弁にも影響を及ぼす可能性があります。電磁弁の故障を防ぐためには、定期的に点検や清掃を行うことが必要です。また、故障した電磁弁は早急に交換することが必要です。

まとめ

 マニホールド電磁弁は、複数の電磁弁を一体化した装置で、流体の制御に優れた性能を発揮します。しかし、マニホールド電磁弁を使用するには、必要流量やポート数、動作方式などの選択や、元圧エアーの供給や排気ポートの共通化などの注意点があります。マニホールド電磁弁を正しく選び、正しく使うことで、省スペースや省エネ、高性能や高信頼性などのメリットを最大限に活かすことができます。

この記事では、マニホールド電磁弁の基本的な知識と選び方、使い方について解説しました。マニホールド電磁弁に関するさらに詳しい情報や製品の紹介は、以下の参考文献をご覧ください。

 

参考文献

  1. WEBカタログ |SMC 株式会社. https://www.smcworld.com/products/ja/s.do?ca_id=102.
  2. 知らないと損をする マニホールド電磁弁の注意点-排気ポート .... https://jp.meviy.misumi-ec.com/info/ja/archives/36675/.
  3. 電磁弁やマニホールドの元圧エアーの問題【多数取付けの注意点】. https://kikaikumitate.com/post-7163/.
  4. 電磁弁の交換と追加方法【Oリングとガスケットの漏れ対策 .... https://kikaikumitate.com/post-12728/.