活性汚泥法の基礎と応用についてわかりやすく解説!

活性汚泥法のイラスト

 こんにちは、この記事では、活性汚泥法という汚水処理の方法について、基礎から応用までわかりやすく解説していきます。

 活性汚泥法とは、汚水に含まれる有機物を分解してきれいな水にする方法の一つです。その名の通り、活性汚泥という微生物を使って汚水を浄化します。活性汚泥とは、好気生(こうきせい)微生物を含んだ有機汚泥のことで、酸素を呼吸して有機物を食べる生き物です。活性汚泥は、下水処理場や浄化槽などで使われています。

 

活性汚泥法のメリットは、以下の通りです。

  • 費用が安い:微生物に任せておけばいいので、難しい手間がかからないし、電気代などの運用コストも抑えられます。
  • 効率良く処理ができる:大量の微生物を培養(ばいよう)できるので、汚水の中の有機物をどんどん分解できます。
  • 環境にやさしい:自然の力できれいな水に転換するので、化学薬品で分解するよりもエコです。

活性汚泥法のデメリットは、以下の通りです。

  • 適正な管理が必要になる活性汚泥法を適正に管理するためには正しい知識を持った管理者が必要です。また、利用した後の廃棄汚泥の処理もしなくてはなりません。
  • 余剰汚泥の問題が残る:処理能力を超えたときに分解できなかったものや、処理の段階で増加し過ぎた微生物自体が余分な汚泥として残ります。汚泥を適切に処理するためには、処理する量に応じた施設の用意が必要です。

活性汚泥法の仕組みは、以下のような流れで行われます。

  1. 汚水に活性汚泥と酸素を混ぜる:酸素を混ぜると、微生物の活動が盛んになり、有機物を食べて増殖します。
  2. 微生物が汚水を分解する:微生物は、有機物を分解して水と炭酸ガスに変えます。このとき、微生物は分解したエネルギーを使って増殖します。
  3. 微生物が増加して群れを作る:増加した微生物は、微生物同士が集まって群れを作ります。この群れを、群衆態(ぐんしゅうたい)と呼びます。群衆態は、質量が増して底に沈みやすくなります。
  4. 酸素の供給を止めると微生物が沈む:酸素の供給を止めると、微生物の活動が弱くなり、沈殿(ちんでん)していきます。
  5. 汚水がきれいな状態になる:有機物を食べて増加した微生物が沈殿した後に残った水は、きれいな水になります。最後に、きれいになった水だけを排出し、底に沈殿した廃棄物を処理します。

標準活性汚泥法について / 汚泥乾燥 | KENKI DRYER

参考 https://kenkidryer.jp/

 

 活性汚泥法には、いくつかの種類があります。それぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。ここでは、代表的な5つの種類を紹介します。

  • 連続式活性汚泥法:汚水を連続して曝気(ばっき)層に投入する方法です。曝気を止めることなく連続して汚水を処理できるメリットがありますが、初期の設備投資が多額になるデメリットがあります。
  • 回分(かいぶん)式活性汚泥法:定期的に汚水を排出しながら、1つの層内にて曝気・沈殿・排出・流入を繰り返す方法です。4つのサイクルを繰り返して汚水を浄水に転換するシステムです。窒素やリンの除去も可能なメリットがあります。
  • 酸化溝(さんかこう)法:汚水が浅い水路を巡回するような曝気槽を反応タンクに用いて、少ない動力で活性汚泥処理を行って最終沈殿池で活性汚泥と処理水を分離する方法です。広い設置面積が必要なデメリットがありますが、窒素除去やリン除去などにも応用できるメリットがあります。
  • 嫌気(けんき)好気(こうき)法:最初沈殿池の代わりに、水処理工程の前段に嫌気槽を設置し、後段に好気槽を設置した処理方式です。嫌気槽で有機物を炭酸ガスとメタンガスに分解し、好気槽で有機物を炭酸ガスと水に分解します。嫌気好気法はリンの除去にも使用できるので、リン除去能力の高い活性汚泥処理として利用されます。
  • 膜分離(まくぶんり)式活性汚泥法:処理水と活性汚泥の分離に、沈殿槽の代わりに、精密濾過膜や限外濾過膜などの膜を使った膜濾過分離の処理方式です。汚泥の管理が容易で、汚泥を高濃度に維持でき、沈殿槽が不要で施設がコンパクトになるメリットがありますが、定期的な膜の薬液洗浄や交換が必要になるデメリットがあります。

 活性汚泥法は、下水や工場排水などの汚水処理に広く用いられていますが、その他にも応用例があります。ここでは、以下のような応用例を紹介します。

  • 高度処理:一般的な汚水処理では除去できない窒素やリンなどの有害物質を除去する処理です。窒素やリンは、水質汚濁の原因となる赤潮富栄養化を引き起こす可能性があります。高度処理では、活性汚泥法に嫌気槽や好気槽を追加したり、特殊な微生物を利用したりして、窒素やリンを分解・還元・吸着させます。
  • バイオガス発生有機物を分解してメタンガスや二酸化炭素などのガスを発生させることです。バイオガスは、再生可能エネルギーとして利用できます。バイオガス発生では、活性汚泥法における嫌気槽で、絶対嫌気性微生物であるメタン生成菌を利用して有機物を分解します。メタン生成菌は、酸素が全くない環境で活動する微生物です。
  • 汚泥堆肥化活性汚泥法で排出される余剰汚泥を堆肥として利用することです。余剰汚泥は、有機物や窒素・リン・カリウムなどの栄養分を含んでいますが、そのままでは臭気や病原菌の問題があります。汚泥堆肥化では、余剰汚泥に炭素源や乾燥剤を混ぜて発酵させて、臭気や病原菌を除去し、土壌改良剤として利用できるようにします。

以上が活性汚泥法の応用例です。活性汚泥法は、汚水処理だけでなく、高度処理やバイオガス発生や汚泥堆肥化などにも応用できる方法です。活性汚泥法は、微生物の力を借りて環境問題に貢献できる方法です。

 

いかがでしたか?活性汚泥法の基礎と応用について、わかりやすく解説できたでしょうか?活性汚泥法は、私たちの生活に欠かせない汚水処理の方法です。活性汚泥法についてもっと知りたい方は、以下の参考文献をご覧ください。

参考文献