タンクにおけるベントの大きさの決め方

 タンクは、液体や気体を貯蔵するための設備ですが、タンク内の圧力が過大または過小になると、タンクの破損や安全性の低下につながります。そこで、タンクにはベントと呼ばれる開口部が設けられており、タンク内の圧力を調整する役割を果たしています。

しかし、ベントの大きさはどのように決めるのでしょうか?ベントの大きさは、タンクの種類や内容物の性質、外部の環境などによって異なります。この記事では、タンクにおけるベントの大きさの決め方について、基本的な考え方と計算方法を紹介します。

ベントの必要性と種類

 タンクにベントが必要な理由は、主に以下の二つです。

  • タンク内の圧力が外部の圧力と均衡するようにすることで、タンクの安全性を確保する。

 

  • タンク内の内容物が蒸発や熱膨張などによって増減することに対応することで、タンクの効率性を高める。

 タンクに設けられるベントには、大きく分けて以下の三種類があります。

  • 自由ベント:タンク内の圧力が外部の圧力と常に等しいようにするベント。タンクの上部に開口部を設けるだけの簡単な構造で、タンク内の内容物が揮発性や可燃性のものでない場合に適している。

 

  • 制気ベント:タンク内の圧力が外部の圧力と一定の差を保つようにするベント。タンクの上部に弁を設けて、圧力が設定値を超えたり下回ったりしたときに開閉する構造で、タンク内の内容物が揮発性や可燃性のものである場合や、タンク内の圧力を一定に保ちたい場合に適している。

 

  • 安全弁:タンク内の圧力が許容値を超えたときに、過剰な圧力を逃がすためのベント。タンクの上部にバネや重りなどで圧力をかけた弁を設けて、圧力が作動圧力に達したときに開放する構造で、タンク内の内容物が高圧や高温のものである場合や、タンクの破損を防ぐために適している。

ベントの大きさの決め方

 ベントの大きさは、タンク内の圧力が設計条件を満たすようにするために決めます。タンク内の圧力は、以下の要因によって変化します。

  • タンクへの流入量と流出量の差:タンクへの流入量が流出量よりも大きいと、タンク内の圧力が上昇します。逆に、タンクへの流入量が流出量よりも小さいと、タンク内の圧力が下降します。

 

  • タンク内の内容物の温度変化:タンク内の内容物の温度が上昇すると、内容物の体積が膨張し、タンク内の圧力が上昇します。逆に、タンク内の内容物の温度が下降すると、内容物の体積が収縮し、タンク内の圧力が下降します。

 

  • タンク内の内容物の蒸発量:タンク内の内容物が揮発性のものである場合、一部が気体になってタンク内の圧力を上昇させます。蒸発量は、内容物の沸点や蒸気圧、タンク内の温度や圧力などによって変化します。

 

  • 外部の気圧変化:外部の気圧が上昇すると、タンク内の圧力も上昇します。逆に、外部の気圧が下降すると、タンク内の圧力も下降します。

 これらの要因によって生じるタンク内の圧力変化に対して、ベントが適切に開閉することで、タンク内の圧力を調整します。ベントの大きさは、タンク内の圧力が最大値または最小値になったときに、ベントからの流入量または流出量がタンクへの流入量または流出量と等しくなるようにすることで決めます。このとき、ベントからの流入量または流出量は、以下の式で求めることができます。

$$Q = CA\sqrt{2\rho\Delta P}$$ 

ここで、

  • Q:ベントからの流入量または流出量(kg/s)
  • C:流量係数(無次元)
  • A:ベントの断面積(m2
  • ρ:ベントから流入または流出する流体の密度(kg/m3
  • ΔP:ベントの開口圧力と外部の圧力との差(Pa

この式をベントの断面積Aについて解くと、以下のようになります。

$$A = \frac{Q}{C\sqrt{2\rho\Delta P}}$$

この式を用いて、ベントの大きさを計算するには、以下の手順を踏みます。

  1. タンクの種類や内容物の性質、外部の環境などに応じて、ベントの種類を選択する。
  2. タンクの設計条件や安全基準などに応じて、ベントの開口圧力と外部の圧力との差ΔPを決める。この値は、ベントの種類によって異なります。自由ベントの場合は、ΔP = 0となります。制気ベントの場合は、ΔP = タンク内の設定圧力 - 外部の圧力となります。安全弁の場合は、ΔP = タンク内の許容圧力 - 外部の圧力となります。
  3. タンク内の圧力が最大値または最小値になったときの、タンクへの流入量または流出量Qを決める。この値は、タンクの容量や内容物の性質、温度変化や蒸発量などによって変化します。タンク内の圧力が最大値になったときは、タンクへの流出量を、タンク内の圧力が最小値になったときは、タンクへの流入量を考えます。
  4. ベントから流入または流出する流体の密度ρを決める。この値は、流体の種類や温度や圧力などによって変化します。流体の密度は、物性表や状態方程式などで求めることができます。
  5. 流量係数Cを決める。この値は、ベントの形状や流体の流れ方などによって変化します。流量係数は、実験データや経験則などで求めることができます。
  6. 以上の値を用いて、ベントの断面積Aを計算する。この値が、ベントの大きさを決める指標となります。

まとめ

この記事では、タンクにおけるベントの大きさの決め方について、基本的な考え方と計算方法を紹介しました。ベントの大きさは、タンク内の圧力が設計条件を満たすようにするために決めます。ベントの大きさを決めるには、ベントの種類や開口圧力、タンクへの流入量や流出量、流体の密度や流量係数などを考慮する必要があります。ベントの大きさを適切に決めることで、タンクの安全性や効率性を高めることができます。

参考文献

以上、タンクにおけるベントの大きさの決め方についての記事でした。ご覧いただきありがとうございました。