嫌気性微生物による水処理

こんにちは、このブログでは嫌気性微生物による水処理というテーマについてお話しします。嫌気性微生物とは、酸素がなくても生きられるすごい微生物のことです。水処理に使うと、エネルギーや資源の節約になります。どうしてかというと、以下の理由があります。

  • 嫌気性微生物は酸素を必要としないので、エアレーション(空気を送り込むこと)が不要です。これは電気代や設備費用の削減につながります。
  • 嫌気性微生物は有機物を分解するときにメタンガスを発生させます。メタンガスは燃料として利用できるので、エネルギーの回収ができます。
  • 嫌気性微生物は有機物をメタンガスに変えるので、残る汚泥の量が少なくなります。汚泥の処理や廃棄にかかるコストや環境負荷が軽減されます。

では、嫌気性微生物はどのようにして水処理を行うのでしょうか。嫌気性水処理にはいくつかの種類がありますが、ここでは代表的なものを紹介します。

  • 嫌気性ろ過法:担体(砂やプラスチックなど)に嫌気性微生物を付着させて反応槽に入れます。排水を担体に通すことで有機物を分解します。
  • UASB法:反応槽の底部に嫌気性微生物が凝集した粒状汚泥(グラニュール)を保持します。排水を下から上へ流すことで有機物を分解します。
  • EGSB法:UASB法と同じ原理ですが、排水を高速で流すことで反応槽を小型化します。

以上が嫌気性水処理の基本的な仕組みです。

 

嫌気性水処理は、高濃度の有機物を含む排水に適しています。例えば、食品工場や酒造工場、畜産農場などの排水を処理することができます。また、下水やし尿などの生活排水も嫌気性水処理で処理できます。これらの排水は、好気性水処理では高コストや高エネルギーがかかるので、嫌気性水処理が有効です。

嫌気性水処理のメリットは、前回述べたように、省エネルギー、創エネルギー、省廃棄物などです。また、嫌気性微生物は好気性微生物よりも耐性が強いので、pHや温度、有毒物質などの変化にも対応できます。さらに、嫌気性微生物は窒素やリンなどの栄養塩類を利用しないので、富栄養化の原因となる物質の放出を抑えることができます。

嫌気性水処理のデメリットは、処理水の水質が低く、放流基準を満たさないことです。嫌気性微生物は有機物を分解するだけでなく、硫化水素アンモニアなどの悪臭成分や有害成分も発生させます。これらの成分は、後段の好気性水処理や化学処理などで除去する必要があります。また、嫌気性微生物は増殖速度が遅く、反応槽内での汚泥滞留時間を長くする必要があります。これは反応槽の大型化や運転管理の難しさを招きます。

以上が嫌気性水処理の応用例やメリット・デメリットについてでした。嫌気性水処理は、環境にやさしい技術ですが、完全な解決策ではありません。適切な場所と条件で利用することが重要です。

 

参考文献: