化学銅、キレート系排水の水処理とは?

 工場や研究所などで使用される化学銅やキレート剤は、金属や有機物と錯体を形成して水に溶け込みます。これらの排水は、そのまま放流すると環境に悪影響を及ぼす可能性があります。そこで、化学銅やキレート系排水の水処理とは、どのような方法で行われるのでしょうか?

 

化学銅、キレート系排水の水処理とは?

 工場や研究所などで使用される化学銅やキレート剤は、金属や有機物と錯体を形成して水に溶け込みます。これらの排水は、そのまま放流すると環境に悪影響を及ぼす可能性があります。そこで、化学銅やキレート系排水の水処理とは、どのような方法で行われるのでしょうか?

化学銅とキレート剤の特徴

 化学銅とは、銅イオンを含む化合物の総称です。化学銅は、電気めっきや印刷基板の製造などに広く用いられます。化学銅は、水中では青緑色に着色し、高濃度では毒性を示します。また、化学銅は一般的な沈殿法では除去が困難です。

 キレート剤とは、金属イオンや有機物と錯体を形成する物質の総称です。キレート剤は、金属表面の洗浄や分析用試薬などに広く用いられます。キレート剤は、錯体を形成することで金属イオンや有機物の溶解度を高めます。また、キレート剤は一般的な沈殿法では除去が困難です。

 

化学銅やキレート系排水の処理方法

化学銅やキレート系排水の処理方法には、主に以下の3つがあります。

  • 酸化分解法
  • 置換法
  • 膜分離法

 

酸化分解法

 酸化分解法とは、X:キレート、M:金属、R:キレート材で表される錯体中のキレート化材(X‐M)を、酸化分解することで金属をイオンとして追い出した後、水酸化物として沈殿処理するものです。この場合、塩素や過マンガン酸カリウムなどの化学薬品で分解する方法があります。

出典:置換法による重金属錯体の処理 – KCRセンター - Kurita

 酸化分解法のメリットは、高濃度から低濃度まで幅広く処理が可能であることです。デメリットは、高温や高圧が必要な場合があることや、副生成物が発生することです。

置換法

 置換法とは、X:キレート、M:金属、R:キレート材で表される錯体中のキレート化材(X‐M)を、別の金属イオン(Y)と置換することで金属をイオンとして追い出した後、水酸化物として沈殿処理するものです。この場合、鉄やアルミニウムなどの金属塩を添加する方法があります。

 出典:置換法による重金属錯体の処理 – KCRセンター - Kurita

 置換法のメリットは、低濃度から高濃度まで幅広く処理が可能であることや、副生成物が少ないことです。デメリットは、置換に適した金属イオンを選定する必要があることや、薬剤の添加量が多くなることです。

膜分離法

 膜分離法とは、X:キレート、M:金属、R:キレート材で表される錯体中のキレート化材(X‐M)を、半透膜によって濃縮・分離するものです。この場合、ナノフィルトレーションや逆浸透などの膜技術を利用する方法があります。

 出典:重金属の基礎知識と重金属含有水の処理方法|エア・ウォーターグループ

 膜分離法のメリットは、高度な処理が可能であることや、汚泥が発生しないことです。デメリットは、膜の選定や管理が重要であることや、膜の劣化や目詰まりによる性能低下が起こることです。

 

まとめ

 化学銅やキレート系排水の水処理には、酸化分解法・置換法・膜分離法などがあります。それぞれに長所と短所がありますので、排水の特性や処理目的に応じて最適な方法を選択することが大切です。また、複数の方法を組み合わせることでより効果的な処理が可能になる場合もあります。

 

上記の記事の参考文献は、以下のとおりです。