逆浸透膜(RO膜)の仕組みとメリット・デメリットを徹底解説!

逆浸透膜で水を精製するイメージ 

 水にはさまざまな物質が溶け込んでおり、その中には人体に有害なものも含まれている可能性があります。そこで、水から不純物を除去するために使われる技術が「逆浸透膜」です。

逆浸透膜とは、水分子だけを通過させて塩類や有機物などの不純物を除去することができる特殊な膜のことです。孔の大きさは約2ナノメートル以下と非常に小さく、ウイルスや細菌なども通過させません。逆浸透膜は、海水の淡水化や下水の再利用などに広く利用されています。

この記事では、逆浸透膜について以下の内容を詳しく解説します。

逆浸透膜に関する知識を身につけて、水の品質や安全性について考えてみましょう。

 

逆浸透膜の原理

 逆浸透膜の原理について説明する前に、まず「浸透現象」と「浸透圧」について知っておきましょう。

浸透現象とは、半透膜(水分子は通過させるが溶質は通過させない性質を持つ膜)で隔てられた純水と不純水の間で起こる現象です。純水側から不純水側へと自然に水分子が移動し、濃度を均一にしようとする力が働きます。この力を「浸透圧」と呼びます。

 

逆浸透膜の仕組みは、この浸透現象と逆の水の流れを作り出すことで、原水から不純物を取り除き、純水に近い水だけを取り出すというものです。不純水側に強い圧力をかけることで、水分子だけを半透膜を通して純水側へ移動させます。このときに用いられる半透膜が逆浸透膜、または逆浸透現象(ReverseOsmosis)の頭文字を取ってRO膜と言います。

 

逆浸透膜は、一般的な浄水器に用いられているフィルターとは大きく異なる点があります。一般的な浄水器は、活性炭で水道水中の残留塩素や有機物などを除去し、ろ過膜(中空糸膜や不織布)で一般細菌やカビなどをブロックします。水道水は元々そのまま飲んでも健康上問題ないものですが、浄水器を使うことで、より安心しておいしい水を楽しむことができるのです。

一方逆浸透膜は、水中に含まれているイオン、金属、ウィルスなど、水分子以外のほぼすべての物質を除去することが可能です。逆浸透膜を使えば、海水や汚染水など飲用には適さないような水であっても、溶け込んでいる物質を除去して浄水することができます。逆浸透膜を使った浄水システムは、飲用水が不足している地域での海水の淡水化、海外での給水支援活動、国際宇宙ステーションなど様々な場面で活用されるようになっています。

逆浸透膜の活用の場

 逆浸透膜は、水から不純物を除去するという優れた性能を持っています。そのため、様々な場面で活用されています。代表的な例をいくつか紹介しましょう。

海水の淡水化

 世界の水資源の約97パーセントは海水ですが、そのままでは飲料水や農業用水には使えません。そこで、海水から塩分を除去して淡水化する技術が求められています。その中でも、逆浸透膜法は最も効率的で経済的な方法として注目されています。

日本でも、沖縄県小笠原諸島など飲料水が不足しがちな地域で大規模な海水淡水化システムが稼働しています。海水を高圧ポンプで加圧し、逆浸透膜を通して淡水化する仕組みです。この淡水は、飲料水や生活用水として利用されています。

 

下水とは、生活や工業などで使用された後に排出される汚れた水のことです。下水は一般的に下水道に流されて下水処理場で処理されますが、その処理後の水(下水処理水)もまだ不純物が多く含まれています。そのため、そのまま放流すると環境に悪影響を及ぼす可能性があります。

そこで、下水処理水をさらに逆浸透膜で精製して再利用する技術が開発されています。この技術により、下水処理水は飲料水や工業用水として再利用できるようになります。これは、水資源の有効活用や環境保護に貢献する技術と言えます。

例えば、東京都は、下水処理水を逆浸透膜で浄化して、都内の公園や学校などで散水やトイレの洗浄に使っています。また、下水処理水を逆浸透膜で浄化した水は、東京湾の水質改善にも役立っています。下水処理水を逆浸透膜で浄化することで、水質が向上し、生物の多様性が増えるという効果が見られています。

 

食品・医薬品の製造

 食品や医薬品の製造には、高品質で安全な水が必要です。しかし、水道水や井戸水などには、微生物や重金属などの不純物が含まれている場合があります。そのため、製造過程で水を使用する場合は、逆浸透膜で精製した純水を使うことが多いです。

逆浸透膜で精製した純水は、飲料水よりもさらに不純物を除去しています。そのため、食品や医薬品の品質や安全性を高めることができます。例えば、清涼飲料や乳製品、点滴液や注射液などには、逆浸透膜で精製した純水が使われています。

 

 

まとめ

この記事では、逆浸透膜とは何か、どのような仕組みや構造を持つのか、どのようなメリットやデメリットがあるのか、浄水器への応用はどうなっているのかなどについて詳しく解説しました。

逆浸透膜は、水から不純物を除去するという優れた性能を持っています。そのため、様々な場面で活用されています。しかし、逆浸透膜にも欠点や制限があります。そのため、逆浸透膜を使う場合は、その特性を理解して、適切に利用することが重要です。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

参考文献