水処理プラントの連動説明書の作り方

 水処理プラントの運転や保守には、連動説明書が欠かせません。連動説明書とは、水処理プラントの各機器がどのように連動して動作するかを図や表で示したものです。連動説明書があれば、水処理プラントの仕組みや操作方法を理解しやすくなります。しかし、連動説明書の作り方は、初心者にとっては難しいかもしれません。そこで、この記事では、水処理プラントの連動説明書の作り方をわかりやすく解説します。

連動説明書の作り方の流れ

 連動説明書の作り方は、大きく分けて以下の4つのステップになります。

  • 1. 水処理プラントの設備や機器の概要を把握する
  • 2. 水処理プラントの操作モードや連動条件を確認する
  • 3. 連動説明書のフォーマットを決める
  • 4. 連動説明書に必要な情報を記入する

それぞれのステップについて、詳しく見ていきましょう。

1. 水処理プラントの設備や機器の概要を把握する

 まず、連動説明書を作る前に、水処理プラントの設備や機器の概要を把握する必要があります。水処理プラントの設備や機器は、大きく以下の3つに分類できます。

  • 前処理設備:水源から取水した水を、砂や泥などの不純物を除去するための設備です。主な機器としては、取水ポンプ、砂捕集槽、格子、沈砂池などがあります。
  • 処理設備:前処理設備で除去できなかった有機物や微生物などを除去するための設備です。主な機器としては、曝気槽、沈殿槽、消毒槽などがあります。
  • 後処理設備:処理設備で生成された汚泥や廃液を処理するための設備です。主な機器としては、汚泥ポンプ、汚泥濃縮槽、汚泥脱水機、汚泥焼却炉などがあります。

 これらの設備や機器の配置や接続関係を、図面や配管図などで確認しておきましょう。また、各機器の仕様や機能も、取扱説明書やメーカーの資料などで確認しておきましょう。

2. 水処理プラントの操作モードや連動条件を確認する

 次に、水処理プラントの操作モードや連動条件を確認する必要があります。操作モードとは、水処理プラントの運転状態を表すもので、以下のようなものがあります。

  • 自動モード:水処理プラントの運転を、制御盤やコンピュータなどで自動的に行うモードです。水質や水量などのパラメータに応じて、各機器の運転・停止や連動を制御します。
  • 手動モード:水処理プラントの運転を、人間が操作盤やスイッチなどで手動的に行うモードです。試運転や点検などの際に使用します。
  • 常用モード:水処理プラントの運転を、通常の条件で行うモードです。自動モードや手動モードの切り替えが可能です。
  • 機側モード:水処理プラントの運転を、各機器の近くにある操作盤やスイッチなどで行うモードです。保守作業や故障対応などの際に使用します。
  • 連動モード:水処理プラントの運転を、複数の機器を連動させて行うモードです。たとえば、沈砂池の除塵機やベルトコンベヤなどを連動させて動かす場合などに使用します。

 連動条件とは、水処理プラントの各機器が連動して動作するための条件を表すもので、以下のようなものがあります。

  • 前提条件:連動を開始する前に満たすべき条件です。たとえば、連動する機器がすべて正常であることや、操作モードが連動モードであることなどがあります。

 

  • 開始条件:連動を開始するために必要な条件です。たとえば、連動する機器のうちの一つが運転されたことや、特定の信号が入力されたことなどがあります。

 

  • 停止条件:連動を停止するために必要な条件です。たとえば、連動する機器のうちの一つが停止されたことや、特定の信号が入力されたことなどがあります。

 これらの操作モードや連動条件を、制御仕様書や運転手順書などで確認しておきましょう。また、実際に水処理プラントの運転を見学したり、運転担当者に聞いたりすることも有効です。

3. 連動説明書のフォーマットを決める

 連動説明書のフォーマットを決めるには、以下の点に注意しましょう。

  • 連動説明書は、水処理プラントの運転担当者や保守担当者などが読むものなので、専門用語や略語を使っても構いませんが、定義や説明が必要な場合は、注釈や用語集などで補足してください。

 

  • 連動説明書は、水処理プラントの各機器の連動を図や表で示すことが多いですが、図や表だけではわかりにくい場合は、文章で補足してください。図や表には、機器の名称や番号、信号の種類や値、連動の開始・停止条件などを明記してください。

 

  • 連動説明書は、水処理プラントの操作モードや連動条件に応じて、複数のパターンがある場合があります。その場合は、パターンごとに連動説明書を作成してください。パターンの違いは、見出しや色分けなどで区別してください。

連動説明書のフォーマットの例を以下に示します。

水処理プラントの連動説明書

前処理設備の連動

パターン1:自動モードでの連動

前処理設備の連動は、以下のとおりです。

  • 取水ポンプ(P1)は、水源から水を取水するためのポンプです。制御盤からの信号(S1)によって運転・停止が制御されます。
  • 砂捕集槽(T1)は、取水した水から砂や泥などの不純物を除去するための槽です。砂捕集槽の水位(L1)によって、取水ポンプの運転・停止が連動されます。水位が高い場合は、取水ポンプが停止します。水位が低い場合は、取水ポンプが運転します。
  • 格子(G1)は、砂捕集槽から流れ出た水から、枝葉やゴミなどの大きな不純物を除去するための装置です。格子の除塵機(C1)は、格子に付着した不純物を掻き落とすための装置です。格子の除塵機は、制御盤からの信号(S2)によって運転・停止が制御されます。
  • ベルトコンベヤ(B1)は、格子の除塵機で掻き落とされた不純物を運搬するための装置です。ベルトコンベヤは、格子の除塵機の運転・停止に連動して運転・停止します。
  • 沈砂池(T2)は、格子から流れ出た水から、砂や泥などの小さな不純物を除去するための槽です。沈砂池の除塵機(C2)は、沈砂池に沈殿した不純物を掻き集めるための装置です。沈砂池の除塵機は、制御盤からの信号(S3)によって運転・停止が制御されます。
  • ベルトコンベヤ(B2)は、沈砂池の除塵機で掻き集められた不純物を運搬するための装置です。ベルトコンベヤは、沈砂池の除塵機の運転・停止に連動して運転・停止します。

前処理設備の連動の前提条件は以下のとおりです。

  • 制御盤の操作モードが自動モードであること。
  • 各機器が正常であること。

前処理設備の連動の開始条件は以下のとおりです。

  • 制御盤からの信号(S1)がONになること。

前処理設備の連動の停止条件は以下のとおりです。

  • 制御盤からの信号(S1)がOFFになること。

パターン2:手動モードでの連動

前処理設備の連動は、以下のとおりです。

  • 取水ポンプ(P1)は、水源から水を取水するためのポンプです。操作盤からの信号(S4)によって運転・停止が制御されます。
  • 砂捕集槽(T1)は、取水した水から砂や泥などの不純物を除去するための槽です。砂捕集槽の水位(L1)によって、取水ポンプの運転・停止が連動されます。水位が高い場合は、取水ポンプが停止します。水位が低い場合は、取水ポンプが運転します。
  • 格子(G1)は、砂捕集槽から流れ出た水から、枝葉やゴミなどの大きな不純物を除去するための装置です。格子の除塵機(C1)は、格子に付着した不純物を掻き落とすための装置です。格子の除塵機は、操作盤からの信号(S5)によって運転・停止が制御されます。
  • ベルトコンベヤ(B1)は、格子の除塵機で掻き落とされた不純物を運搬するための装置です。ベルトコンベヤは、格子の除塵機の運転・停止に連動して運転・停止します。
  • 沈砂池(T2)は、格子から流れ出た水から、砂や泥などの小さな不純物を除去するための槽です。沈砂池の除塵機(C2)は、沈砂池に沈殿した不純物を掻き集めるための装置です。沈砂池の除塵機は、操作盤からの信号(S6)によって運転・停止が制御されます。
  • ベルトコンベヤ(B2)は、沈砂池の除塵機で掻き集められた不純物を運搬するための装置です。ベルトコンベヤは、沈砂池の除塵機の運転・停止に連動して運転・停止します。

前処理設備の連動の前提条件は以下のとおりです。

  • 操作盤の操作モードが手動モードであること。
  • 各機器が正常であること。

前処理設備の連動の開始条件は以下のとおりです。

  • 操作盤からの信号(S4)、(S5)、(S6)のいずれかがONになること。

前処理設備の連動の停止条件は以下のとおりです。

  • 操作盤からの信号(S4)、(S5)、(S6)のいずれかがOFFになること。

以上が、前処理設備の連動説明書の作り方の流れです。この記事が参考になれば幸いです。