濾過塔におけるメリーゴーランド方式とは?水処理の最新技術を解説します

 水処理において、不純物を除去するために濾過塔という装置が使われますが、その中でもメリーゴーランド方式という特殊な方式があります。この方式は、複数の濾過塔を連結し、弁の制御によって各濾過塔の役割を切り替えることで、処理を停止することなく、ろ材の効率的な利用やメンテナンスが可能になるというものです。この記事では、濾過塔におけるメリーゴーランド方式の仕組みやメリット、実際に採用している事例などを紹介します。

濾過塔とは?

 濾過塔とは、水や排水中の不純物をろ材によって除去する装置です。ろ材とは、砂や炭などの粒状の物質で、水を通すと不純物を吸着したり、ろ過したりする性質を持ちます。濾過塔は、水を上から下に流す下向き流れ方式と、水を下から上に流す上向き流れ方式があります。下向き流れ方式は、不純物がろ材の表面に付着するため、ろ材の深さが浅くても高い除去効果が得られます。上向き流れ方式は、不純物がろ材の隙間に詰まるため、ろ材の深さが深くなければなりませんが、ろ材の表面が汚れにくく、洗浄が容易です。

メリーゴーランド方式とは?

 メリーゴーランド方式とは、複数の濾過塔を連結し、弁の制御によって各濾過塔の役割を切り替える方式です。例えば、ある濾過塔がろ過処理を行っている間に、別の濾過塔がろ材の洗浄や再生を行うことができます。このようにすることで、処理を停止することなく、ろ材の効率的な利用やメンテナンスが可能になります。メリーゴーランド方式は、下向き流れ方式と上向き流れ方式の両方に適用できます。

メリーゴーランド方式のメリット

メリーゴーランド方式には、以下のようなメリットがあります。

  • 処理を停止することなく、ろ材の洗浄や再生ができるため、水質の安定性や処理能力が向上します。
  • ろ材の使用量や洗浄水の消費量が減るため、コストや環境負荷が低減します。
  • 弁の制御によって濾過塔の役割を切り替えるため、機械的な移動や回転が不要で、故障や騒音が減ります。
  • 濾過塔の数や配置を自由に設計できるため、空間効率が高くなります。

メリーゴーランド方式の事例

 メリーゴーランド方式は、水処理の様々な分野で採用されています。以下に、いくつかの事例を紹介します。

「メリーゴーランド式高速ろ過装置」

 クボタ環境エンジニアリング株式会社は、メリーゴーランド方式を用いた「メリーゴーランド式高速ろ過装置」を開発し、水道水や工業用水の処理に応用しています。この装置は、下向き流れ方式の濾過塔を4台連結し、弁の制御によって各濾過塔の役割を切り替えます。ろ材には、砂と炭を混合したものを使用し、高い除去効果と再生効率を実現しています。この装置の特徴は、以下のようにまとめられます。

  • 処理能力が高く、1台あたりの処理水量は最大で毎時200立方メートルです。
  • ろ材の使用量が少なく、1台あたりのろ材量は約1.5トンです。
  • 洗浄水の消費量が少なく、1回の洗浄に必要な水量は約0.5立方メートルです。
  • 空間効率が高く、1台あたりの占有面積は約3.5平方メートルです。

東京大学の「新規なリン吸着材を活用した排水高度処理システムの構築」

 東京大学は、メリーゴーランド方式を用いた「新規なリン吸着材を活用した排水高度処理システムの構築」を行っています。このシステムは、上向き流れ方式の濾過塔を2台連結し、弁の制御によって各濾過塔の役割を切り替えます。ろ材には、リンを効率的に吸着する新規な材料を使用し、リンの回収と再利用を目指しています。このシステムの特徴は、以下のようにまとめられます。

  • リンの除去率が高く、平均で99%以上です。
  • リンの回収率が高く、平均で90%以上です。
  • リンの再利用率が高く、回収したリンを肥料や燃料などに利用できます。
  • ろ材の寿命が長く、1回の再生で約100回のろ過処理ができます。

まとめ

 この記事では、濾過塔におけるメリーゴーランド方式の仕組みやメリット、実際に採用している事例などを紹介しました。メリーゴーランド方式は、水処理において、処理を停止することなく、ろ材の効率的な利用やメンテナンスが可能になるという画期的な方式です。水処理の最新技術として、今後も注目されるでしょう。